おっと、そうだった

先日「半島を出よ」読了しました〜。

半島を出よ〈上〉 (幻冬舎文庫)

半島を出よ〈上〉 (幻冬舎文庫)

半島を出よ〈下〉 (幻冬舎文庫)

半島を出よ〈下〉 (幻冬舎文庫)

読み応えがあって面白かった。
作品を描くにあたって著者が多くの文献を参考にしただけあって、確かなシミュレーション的要素があって興味深かった。
読了前にチェックした誰かの感想で「それぞれの章でいろんな人物が主役のポジションで語っているのだけれど、殆んどの人物がその後どうなったのかがわからないのが不満」というのがあったのだけど、なんかちょっとソレは的を外した読み方をしているなーと、読み終わってから思った。そういう満足感を与える必要がある作品であれば、多分章ごとに語り手を変えることはしなかっただろう。
私なりの個人的感想で言うと、この小説の主人公は”日本人”全体なんじゃないかと思う。
まあ、北朝鮮コマンド側の語りもいっぱいあるにはあるんだけど、それは主人公の相手役という感じで。
こんな状況下におかれた日本の政治は、経済は、社会は、人は、みんなどうするのだろう?というお話で、その落とし前を日本社会のアウトローが着けてしまうという顛末が、この作家の好みなんだろうなぁと思った。
そして、完成している作品にいちゃもんつけてもしょーもないのだけれど私の好みで注文を付けるとしたら、人物を大事に描きたいと思う作家の気持ちは伝わるトコロはあるのだけれど、せっかくこれだけ舞台設定がいいんだから、人物の個別描写はもう少し裏っ側に回して、物語のテンポ感を大事にする方が良いように思った。例えば、数少ない恋愛話のくだりとか、福岡の人の北朝鮮反乱軍に対する気持ちの変わり具合とか、そのへんの描写にもう少しページを使った方が話の流れがスムーズだったんじゃないかという気がする。
また、イシハラグループが最終的に1つの目的に向けてまとまって行動できたことは、彼らの性格を考えると実際は奇跡に等しいと思うので、もうちょっと強い動機づけがあった方が良かったかなぁ、とも思った。
・・・なーんて、読み終わってもあれこれと頭の中でいじってみたくなるくらい面白かったというコトなんです。b(^o^)
社会のシステムが肥大化している分だけ周囲の状況に対して諦め感を簡単に持ててしまえる今の日本ではあるのだけれど、それに対して確かに違和感や倦怠感がある、と誰しもが思えるのであれば、とりあえずは、まだ、捨てたもんでもないとは思う。
確かに今のぬるい平和な日本に煮え切らなさを感じることはあるのだけれど、とはいえじゃあ、何が一番よいのかも正直わからないワケで。
自分がバカだということをバカだから知ることができないということは不幸なのか、幸せなのか、
自分がお金持ちであるためにモノの大切さがわからないけれど、わからなくても不自由がないことは幸せなのか、
自分が貧乏であるために生活がすさんでいるけれど、その分モノの大切さを知っていることは幸せなのか、
自分が痛い経験をしてきた分だけ他人の痛みを理解できることは幸せなのか、
自分が痛い経験を知らずに平穏無事に生きていけることは幸せなのか、
モテモテなのが幸せなのか、誰かを夢中に愛せることが幸せなのか、
ファッションの路線がセクシー一辺倒になっちゃうけれど巨乳の方が幸せなのか、
多少貧乳でもお嬢様系や中性路線も自在なスタイルの方が幸せなのか、
どっちが幸せで不幸せか、少なくとも私には判定しきれない。
なので、とりあえず大事なこととしてとっておきたいものというのは、社会的な価値に照らして重要なモノとかではなくて、最終的には自分の個性なのだと思う。
そういう意味をこめて、この物語がイシハラさんでしめくくっているのはいい感じだなぁ、と思った。
そして、本州に住む一市民の自分としては、本当に今の日本経済には是非頑張って欲しいと思う。
・・・そして只今、「5分後の世界」を読み始めています〜♪