読書感想

トム・ゴードンに恋した少女 (新潮文庫)

トム・ゴードンに恋した少女 (新潮文庫)

スティーブン・キングです。相変らず文字が多いです。
でも、とりあえず今まで私が読んだキングの本の中では一番読みやすかったし、人にもオススメしたい良作でした♪
誰だったか、知り合いの一人が
「海外の小説は登場人物の名前が覚えられない。推理小説だと登場人物も多くてなおさら読めない。」
なんてコトを言ってたのだけど(^o^;この本だったら大丈夫!
基本的には主人公である9歳の少女トリシアの名前だけでも覚えてくれれば話は進むからっ!
(実は読んだことはないのだけど)もしかしてスタンド・バイ・ミーに近いのかな?少女が森で迷子になるお話です。
両親が離婚して、家族仲が悪くなっている母・兄とともにアパラチア遊歩道という大自然の端っこを満喫するためのちょっとしたハイキングにやってきた9歳のトリシア。
せっかくの美しい自然に囲まれているのに、母と兄は口げんかをしながら先へどんどん進んでしまい、そんな2人に嫌気がさしていたトリシアは、トイレに行きたくなったついでに「ちょっとだけ」のつもりで入り込んだ脇道で、そのまま迷子になってしまう。。。
主人公が9歳だから、そんなにしんどいことはないだろう・・・と予想したいところが、キングはそういうコトはしません。
ここから本気のサバイバルが始まります。
昔、私自身がこの年頃に夢想した「家出して、自然の恵みで自給自足」をマジでやったらこんな目に遭います、と教えていただいたかのような内容を存分に含んでいます。
心身ともに疲労困憊しながら何日も山中を彷徨うトリシアは実際悲壮な状況なのだけど、それでも9歳、それでもやっぱり主人公ということで、そんな彼女の慰めはとても可愛らしくていじらしい。
人間社会から隔絶された山中で、唯一その社会との細い絆になったのがウォークマンに付いていたラジオ。
そのラジオで、大好きなレッドソックスの試合中継を聞き、特に大好きなトム・ゴードンがクールな立ち居振る舞いでセーブを決めるのを聞いて、
「きっと自分もセーブされる!」
と自らを励まし、自分なりになんとか冷静になろうと頑張ってサバイバルを続けてゆく。
時々心細くなったりしたら、そんなトム・ゴードンや、友人や家族と会話する空想をしながら、ある時はパニックになったり、ある時は冷静になったり、それでもひたすら歩き続けてゆく。
また、ストーリーの途中途中で普段のトリシアの学校生活や家庭での様子の回想が入ったり、トリシアを心配する家族の心情が描写されていて、読み進んでいく程に私の中で登場人物がすごく身近な人物になってゆくようで、それがなんとも切なかった。
だから、最後まで読み終わった時はかなりの満足感だった♪
ちなみに、トム・ゴードンを日本で誰かに例えようとしたら、うーん、うーん・・・
最強っぷりとしては最盛期のベイスターズ佐々木で、クールさのイメージはイチローかな。
でも多分、寡黙な印象はカープの前田のイメージの方が近いかもしれない。
って、これではプロ野球好きな人でもワケわかんないか・・・?(^o^;
家族からはぐれて心細くなった少女が頼みにするような人物、うちの娘だったらどうだろう?
アンパンマンかな?ゴーオンイエローかな?
昔の私だったら「戦闘メカ・ザブングル」のブルメか現役時代の山本浩二かなぁ。
大人になった自分が読むと、本人目線でも保護者目線でも読めてなかなか面白い作品でした。
できるものならば小学生の高学年あたりのコにも読んでみて欲しいと思う作品だけど・・・まだ難しいか〜。