「サンキュー・スモーキング」を観た

スカパーの録画だけど、ようやく観た。
もともと伝え聞く評判が良くて気になっていたのだけれど、なるほど面白かった♪
「タバコ研究アカデミー」の広報部長を務めるニック(アーロン・エッカート)は、タバコ業界を擁護する側のスポークスマンとして様々な場所でブーイングを受けるのにも負けず、巧みなディベート術で活躍し、自信満々に仕事をこなしていた。
私生活ではバツイチで、元妻と息子(と元妻の結婚相手)に明け渡した自宅のローンを払いつつアパートで一人暮らし。元妻は自分と息子が交流することを快く思っていないし、息子の学校でも自分の仕事について揶揄されそうになったりと状況は芳しくはないけれど、父親の言動の率直さと聡明さに息子自身からの信頼は得られている。
同じ境遇にある親しい友人(アルコール業界のPRウーマンと銃業界のPRマン)もいて、仕事も私生活も順風ではないものの上手に渡り歩いている生活ぶりだったのだけど、ワキの甘さからある日窮地に陥ることになる・・・というお話。
まず、このニックのディベート術が笑えるブラックユーモアに溢れている気が利いているのが良い。
ここで詳しく書いてしまうのはネタバレでつまらなくなりそうなので遠慮するものの、ひとつだけ。
学校で子どもにタバコの害について問われた時に、
「ママに”チョコレートは有害だ”と言われて、それを信じる?
大事なのは自分で考えて判断することだ。」

という主旨の話を聞かせる。
大人の価値観をただ言い聞かせるのではなく、自分で考えることを勧める。
話をすり替えてはいるけれど、すり替える価値のある話はちゃんとしている。
そしてきっと、その言葉の意味を理解できる子どもであれば、ちゃんと自分で実際に考えることもできるんじゃないかな、とも思う。
また、登場人物の多くが自分の生き方に率直なのが良い。
主人公であるニックをはじめ、その上司、タバコ業界に訴訟を起こそうとしていた老俳優、ハリウッドエージェンシー、反タバコ派の議員、女性記者etc.
登場人物やその利害関係はいろいろなのだけれど、方向性がそれぞれ明確で納得できるものがあって、各キャラクターに偽善臭さのないところが、観ていて楽しかった。
そして要所要所で存在感を持つ息子がいい。
離婚した両親の板ばさみになっている純真な子ども・・・なんて役じゃなくて、父親の影響もあってか、行動力ではなく強烈なディベート術で母親を黙らせ、仕事で失敗して凹んだ父親を励ます。とはいえただクソ小生意気なんじゃなくて、行動原理はちゃんと「両親が好きだから」という部分に根付いている。
12歳だもんね。天使のような可愛い男の子よりも、こっちの方がまだ実際にいるかも知れない感じがするし、このくらいの方が親としては(てこずらせられるかも知れないけれど)頼もしくていいように思える。
話の顛末としては特別劇的ということはないのだけれど、情報の持ち方、使い方、ものの話し方の大事さを学べる佳作でした。
あとついでに、趣味的な見所としては、冒頭にあるタバコのデザインを流用してのキャストやスタッフ紹介のカッコよさと、今はトム・クルーズの奥さんになってもうこんな仕事はしてくれなさそうなケイティ・ホームズのちょっとエロ可愛い感じ。
・・・ということで、この作品の教訓のありがたみを考えると私が点数をつけるなんておこがましい気がするのだけれど、80点☆とさせていただきます。