時間

今日、わりと単調な仕事をしていたら、ふいに古い記憶がよみがえってきた。
昔、私の恩師が50歳代前半にして会社を早期退職した。
当時、御本人はそこそこの年齢ではあるけれど、奥様はまだ若くて、お子さんは小学生の高学年と中学生くらいだったと思う。
もともと大きな会社で管理職をされていたから、早期退職と言ってもお金の余裕がそれなりにあった筈なのだけど、
「辞めたのはいいんだけど、これからどうしようかなあ?と思って。
子供達もまだ成長途中だし、ぶらぶらしないでちゃんと時間を有効利用して過ごしたいと思うのだけど、何かいいアイデアはないかな?」
と意見を求められた。
私より全然、人生の先輩なので、そう言われてもちっとも気の利いた考えが浮かばず、
「う〜ん、私だったら、何かボランティアをやりたいと思うところですが・・・」
と、無難にありがちな返事をしたら、
「おお、なるほど!」
とご本人はとても嬉しそうに言葉を返してくださった。
で、その後、実際にどう過ごされたのかはお聞きすることはできなかったのだけど、そんなお話をした1年後に、その方はお亡くなりになった。
どうも、たぶん、早期退職は病気が理由だったようで、余命の使い方のアイデアを求められたのだということに、後になって気がついた。
御遺族の方とはお葬式で会ったきりなので、どんな過ごし方をされていたのかを聞くことができなかったのだけど、自分の余命をボランティアに使うアイデアにあんなに嬉しそうなリアクションをされていたことを思うと、きっと、遺される大切な人たちのために最善を尽くしたんじゃないかな、と予想している。
時間の使い方、何気ないけど、大事だよね。