切迫流産

雨の中、憂鬱な気持ちを抑えて車で産婦人科へ行った。
駐車場から病院までは外を少し歩かねばならないものの、病院での待ち時間に娘をどうするかを考えた結果、やや強引ながらベビーカーで移動することにした。
ベビーカー用の雨合羽を買おうかと一瞬迷ったものの、5000円近い値段だったのでやめた。
こんな事態でなければ雨の日にベビーカーを押すなんて絶対しない。
病院では今回初めて検尿と血液検査を行った。体重測定・・・重かった。
でも、スタートラインがこの体重なら、体重管理はそんなに苦しまないで済みそうだ。
それから内診を受けた。
前回カンジタがあって先生はそれを気にしていたけれど、
「カンジタは改善したと思います。それより昨日出血がありました。」
と言うと、先生も
「あー、そうですね、確かに子宮の中で出血してますね。」
と返してきた。そして、よどみなく
「切迫流産ですね。」
と言われた。
以前に出血があった時は「しばらく安静を心がけてくださいね」と言われただけだったけれど、今回はいきなり核心をつかれた。
続けて、
「確かご実家が近いのですよね。しばらくはお母さんにご助力いただいて、ずっと寝ててください。一週間後にまた来てください。」
と言われた。
「何かこれ以降に他の症状が出たら、急いでまた受診しないといけないとかの目安はありますか?」
と聞き返したら、
「いえ、この時期での流産は手の施しようがないですから。」
とアッサリ言われた。
一応子宮の収縮を抑制する薬をいただき、ひたすら安静にすることだけを申し付けられて帰ることになった。
幸い胎児は順調に成長中とのことだけど、これ以上出血が広がると子宮の機能低下や胎児が出血した血に圧迫されることによって流産する危険があるそうだ。
なるほど。
この先生は私にはとても合っている。
無責任に気休めを言ったりせず、明確な事実をちゃんと教えてくれる。
ジタバタしても、なるようにしかならない。
妊娠初期に流産するのは自然淘汰だと聞いたことがある。そしてきっとその通りなのだと思う。
そういうレベルのものを人為的に防ぐことの方が、却って先天異常を引き起こす危険性があるようにも思えるし、今はおとなしく様子見するしかないのだ。
もし流産したら、改めて働きに出よう。
ちーちゃんと一緒にディズニーランドに行こう。
現実に向けてそんなコトも考えてみたけれど、なんだかやけに泣きたい気持ちになった。
どうにもならないコトで泣くのはバカバカしくて嫌だし、普段はしない方なのに、今日はなぜか泣きたくなった。
そして、切迫流産だと言われたこんな日に限って、つわりはいちだんと強かった。
流産すると、つわりは途端になくなるらしい。
人それぞれ違いはあるらしいけれど、つわりは胎児の自己主張のようなものなのだと思う。
実際、以前つわりでしんどかった時、自分で自分のおなかに向かって
「元気なのはわかったけれど、今目の前に美味しいご飯があるんだよ。だから一緒に食べようよ。」
って言ったら、つわりが治まったことがあった。
そんなコトを考えているうちに、まだ元気に成長中のコドモがいるというのに、今めそめそするのは気が早すぎると思えるようになった。
車の後部座席には、去年散々ドタバタした末に生まれ、今はそんなコトも知らずに順調に育っている娘がすやすや眠っている。
やっと泣きたい気持ちが収まった。
安静にしろと言われたのにちょっと申し訳ないと思いつつもスーパーとドラッグストアに寄り道し、一週間外出しないで済むようにと食材やオムツ、粉ミルクなどを購入して自宅に戻った。
妙な表現だけど、頑張って安静にするぞお〜っ。