趣味の競馬

昨日なんとなく日記に競馬用語を出してみて、何気に昔の楽しかった趣味を思い出した。
ずばり、競馬だ。
でもギャンブラーじゃないゾ。私は好きな馬に単勝で100円を賭けて、その馬券が勝っても負けてもソレを大事にアルバムに貼ってしまうようなファンだった。
なんでそんなコトをするのかって言うと、(今でもそうなのかは知らないけど)単勝で購入した馬券には、馬の名前がちゃんと表記されるからだ。連勝馬券では表示されない。
「競馬」と聞くとどうしてもギャンブルのイメージが強く見られてしまいがちだけど、貴族の遊びみたいな楽しみ方もできれば、動物園的な楽しみ方もできるし、私みたいに馬をプロスポーツ選手みたいに応援する楽しみ方だってできるんだ。
もともと競馬を見るようになったきっかけは、競馬好きの男友達に誘われてのことだった。
いつもは自分の彼女と毎度競馬場へ遊びに行っていた友達は、ある日彼女が都合で行けない日に、思いつきで私を誘ってくれたのだった。
誘われた当時の私には、競馬については何の知識もなかったのだけど、
「早朝6時前に競馬場へ行って席をとって観戦する」
という言葉に興味を持ってOKした。
なんか、「早起きしてまでする遊びって、かなり楽しいのかな?」なんて期待してしまったのだ。
行き先は中山競馬場。時期は10年以上前の新年最初の開催日。土曜日だ。
自由席で観戦するなら、重賞レースがあるわけでもない土曜日に早朝出掛ける必要は全くない。狙っているのは指定席だ。
自由席で見るフロアについては一般的なギャンブラーの巣窟のイメージ通り雑然としているのだけど、指定席のフロアはかなりキレイで、落ち着いて予想したり観戦することができる。
但し、そういう席はやはり人気があるので早朝に指定席券売り場へ行って並ばないとゲットできない。
今回は無事にB指定席をゲットできた。
友達に馬券の買い方をレクチャーしてもらい、お勧めと言われた競馬新聞から「一馬」を購入し、レーシングプログラムも含めてにらめっこ。
最初は奇抜な馬の名前ばかりに目が行ってしまいがちだったけれど、どの馬に賭けるかの基準として、過去のレースを参考にするという真っ当な意見を友達からもらい、結果友達が選んだ組み合わせを更にちょっとひねって購入するというシロウト浅知恵な賭け方をしてしまった。
でも、これが実は結構当たってくれたりした。ビギナーズラックだね♪
怖いので各レースにつき最大で300円までしか賭けなかったけれど、3つくらいのレースで5倍とか3倍くらいのオッズの馬券を当てた。
これで微妙に楽しさを感じ始める。
それから、中山競馬場の新年最初の開催日には、実は昼の休憩時間帯に騎手養成学校の卒業予定生徒による模擬レースが開催されるのだけど、これがまた楽しかった。
午前中のレースに対する喧騒とは全く異なる和やかな歓声の中、時々犬みたいな名前の馬も混ざっている練習用の馬に跨って学生達が馬場に入場。
本番さながらのファンファーレの後に出走するのだけれど、やっぱりスピードは遅い。
それでも一生懸命な騎乗姿に声援を送りたくなる。とても良い箸休め的レースだった。
それから午後にはメインレース。ちなみにこの日は偶然武豊が騎乗する馬があった。
競馬を知らなかった私でも彼の名前は知っていた。でも、彼は関西の競馬場で主に活躍する騎手なので、関東で土曜のレースで騎乗するのはちょっと珍しいのだ。(次の日の大きなレースで乗る馬の為の上京だったのかもしれない)
私は素人らしく、武豊の乗る馬と、他になんとなく成績が上向きっぽいと思われる馬の組み合わせで馬番連勝の馬券を購入した。今でも覚えている。キョウワホウセキマイネルヨースだ。
果たしてその結果は大当たり!100円しか購入しなかったけれど、50倍近いオッズがついていたので約5000円と換金できた。
初めての競馬観戦で、黒字で、イベントも見て、武豊も見て大満足。ついでにこの日は実は雪も降って、指定席のガラス張りの座席から見る雪の降る競馬場はとてもキレイだった。
その日から数年間、私は競馬ファンになった。
ちなみに、私が競馬ファンから足を洗うことになった理由は、大好きな馬の盛衰と一緒に気持ちも衰えてしまったからだった。
その馬の名前はスターマン。知っている人がいたらそれだけで嬉しいなあ。
やはり約10年ほど前、中央競馬には無敵と畏れられる馬がいた。ナリタブライアンだ。
そのナリタブライアンの全盛期(と言っても休み明けではあったのだけど)に、この馬に土をつけた馬がスターマンだ。
目をつけた当初はなんか安易な名前の馬だなあ・・・と思った。
確か神戸新聞杯で、なんとなく馬券を買ったら勝った。
勝ってみて改めて過去の戦績を見てみたら、なんか上り調子の馬らしい、ということがわかった。
次にこの馬のレースを見たのは京都新聞杯だった。
「あ、またこの馬が出るんだー」
と無邪気に思ってまた馬券を買った。その頃まだ競馬に素人だった私はナリタブライアンは眼中になかった。ただ「人気を集めている馬がいるんだなー」というくらいには思っていただけだった。
中山競馬場で馬券を買って、モニターで京都新聞杯の映像を見た。
馬ゴミにもまれて大丈夫か!?と思っていたら、見事に内から追い上げて一着でゴールインした!!!
「やったーーーっ!!!」
と馬券売り場で声を上げて喜んだ私は、その瞬間、思いきり周囲から浮いた。
・・・え?なんで?
後で知ったけれど、それほどまでにもナリタブライアンは絶対勝つだろうと多くの人が信じていたのだそうな。
なんでも、その日のフジテレビの競馬中継にはゲストとしてナリタブライアンを育てた?牧場長が招かれていて、関係者もみんなナリタブライアンが勝つものと信じていたからゲストはちょっと前祝にお酒まで飲んでしまっていたのに、負けた瞬間にすっかりしらふの顔に戻ってしまっていたとか。。。
こんな競馬素人の私を喜ばせてくれたスターマンを私はすっかり好きになり、それ以降この馬の成績が振るわなくなってしまっても、ずっと見守りながら競馬ファンを続けていた。
残念ながら最後は普通に引退して種牡馬としても花咲かず、現在は中京のどこかの乗馬クラブの所属場になっているらしいとの便りを聞いたのが最後だ。
ギャンブルの対象としてでなく、ちゃんと馬を1頭ずつ見ていると、本当に競馬は面白いと思う。
スターマンの他にも印象強い馬はいろいろいたけれど、心の痛む記憶としては、やはりライスシャワーがいる。
競走馬の世界は厳しいけれど、あれだけ強い馬なら引退後は安泰だったろうに、悲しいかなこの馬はレース中に骨折してしまい、安楽死処分となってしまった。
当時私はテレビでリアルタイムにレースを見ていた。
京都競馬場で行われた宝塚記念、コーナーを曲がる馬群の中で1頭の馬が前のめりに膝を崩すように転倒した。当然騎手も落馬した。
他の馬が走り過ぎてしまったコースに残された騎手と馬。馬の方は自力で立ち上がれずにもがきながらも、何気に落ちた騎手を気遣っているかのように思えた。
この頃には私自身も乗馬をやっていたので、落馬の衝撃や馬の状況は大体察することはできた。
幸い騎手の方は大きな怪我はせずに済んだものの、その場から立ち上がれなかった馬(ライスシャワー)はそのまま生涯を閉じることになってしまった。
騎乗していた的場騎手は
ライスシャワーが転倒する際に、跳ね上がって自分を後ろに落としてくれたから自分は助かった。」
という趣旨のコメントをしていた。やっぱり人と馬の間には確かな信頼関係が築けるのだと思えて、かなり泣けた。
スターマンの成績がふるわなくなって以降、私の心に留まる馬がいなかったのでそのまま競馬はしなくなってしまったけれど、あの頃の競馬が好きだった私としては、できることなら世の中にある「競馬=ギャンブル」というイメージではない形で競馬が認知されて楽しい娯楽として流行るといいなあ、と今でも願っている。
とはいえ、ギャンブルだからこそ培えたファン層に多大に支えてもらっている業界であることは否めないのだけどねえ〜・・・。