仕事のステイタス

まず、懺悔します。
10年以上前、私は悪いドライバーでした。
決して常習ではありませんが、ある日、魔がさして他の車にケンカを売りました。
もうあんなコトは決してしません。
神様どうぞお許しください・・・。m(_ _)m
・・・いきなりこんな書き始めにしたのは、多分書き終わる頃にはまたエラソーな調子に戻ってしまいそうな気がしているからだったりする。
さて、懺悔の気持ちを忘れずにいられるだろうか?
突然だけど、10年ちょっと前に私がしでかした運転トラブルについての話をひとつ。
免許を取得してから多分2年くらいたった辺りかな?その頃は既にキャラバンをそれなりに乗りこなせるようになっていた。
ある日、キャラバンに乗って長時間ドライブをしていた。
走行距離としてはそんなに長いわけではないのだけれど、なにぶん道が地獄のように渋滞していた。
ある街道で4時間くらい渋滞にハマったまま、アリンコといい勝負になるんじゃないかというくらいのノロノロしたスピードで車を運転していた。
その道は普段から渋滞し易かったのだけど、その日は特にひどかった上に、アリンコスピードになったあたりはあともう少しで大きな橋にさしかかる手前まで来ているトコロだった。
多分橋を渡りたい車が集中してしまっていたのだと思う。
ストレスは結構溜まっていたものの、
「もともと道も時間帯も最悪なんだし、同じように渋滞にハマっている車がこんなにいるんだから、我慢していよう」
と自分に言い聞かせていた。
そして、やっと車は橋の手前の交差点までやってきた。
丁度私の車が停止線の辺りに来たところで信号がいったん赤になり、そしてまた青になった。
けれど、折からの渋滞で信号が青になってもその先にいる車が前進する気配はなく、対向車線には右折の車も何台かあったので、私は無理に車を前進させずに停まったまましばらく様子見をしていた。
(あ〜あ、前進してくれないかなあ・・・)
と思いつつ、自分の車の左側のサイドミラーをふと眺めたら、私と同じ車線でかなり後ろにいた1台の車が、左折専用レーンへとはみ出してきた。
最初は、痺れを切らして左折して迂回ルートを取ろうとしている車かと思って見ていたのだけれど、その車は私の車の横を素通りすると、レーンの矢印通りに左折するのではなく、私が車を詰めずに空けておいた交差点にそのまま進入し、強引に私の車の前に割り込んで停止したのだった。
「・・・なんだオマエ?ああ?」
多分、そんな言葉が自然と口をついて出てきてしまっていたような気がする。
割り込んできた車はレビンだ。
運転している人間の顔はわからないけれど、なんだかエラそうに、車の窓から手先だけ出してタバコの灰を外へ落としていた。
4時間のストレスが、この瞬間に噴火してしまった。
次の信号の変わり目では私も自分の車を前進させた。
かなり、前の車にピッタリと張り付いた。
渋滞しているのだから当然ではあるけれど。
そして、数分かけてようやく橋を渡りきった。
途端に車の流れが生き返り始める。
前方のレビンも元気よさげに走り出した。
私のキャラバンも走り出した。
両者の距離はピッタリのまんまで。
レビンは自分の運転テクニックに自信があるらしく、そのうち法定速度プラス20キロくらいで走り始めた。
私もぴったりプラス20キロでくっついていった。
そのまんま街道を5キロくらい走った。
もちろんずっとピッタリくっついて。
別にハイビームやウィンカーを出すようなあからさまなマネはしない。前方の車のブレーキランプやカーブのタイミングに細心の注意を払って合わせてゆき、ひたすらピッタリ後ろをついていってやった。
車間距離がどのくらい詰まっていたかよく思い出せないけれど、結構きわどかったと思う。
そしてこっちはキャラバンだから、バックミラーでちゃんと確認していたら、かなりの威圧感があったかも知れないとは思う。
私はあともう2キロだけこの街道を直進する予定がもともとあったので、こんな運転をするのはあくまでもお互いの車が同じ道を走り続けている間だけのコトと決めていたのだけれど、前の車の方はそれまで耐えることができなかったらしい。
赤信号で停止したタイミングで、前の車から20代中盤くらいの男性が運転席から降りてきた。
「どういうつもりだ!?絶対当たってたぞ!」
と文句をつけてきた。
私としてはギリギリ当てていないつもりだったけれど、既に夕方で周辺は薄暗くなってきていたし、一応故意にそういう運転をしていたという後ろ暗さはあったので、
「・・・そうですか?」
とだけ、表面的には面倒くさげに返事をした。
レビンの運転手は、よもやキャラバンでこんな運転をする人間がハタチそこそこの女だとは思ってもみなかったらしく、こちらの顔を見てちょっと驚いたらしかったけれど、続けて
「警察呼ぶから路肩に付けてて待ってろ!」
と言って、少し先にあるコンビニの公衆電話へ走って行った。
・・・やっちゃったー。。。
ここでようやく反省した。
でも、まだ自分の中にある負けず嫌い根性がくすぶっていて、
(お巡りさんに問い詰められて、前後の事情を話した上でたしなめられたら、そのとき謝ろう)
と思っていた。
一応、その時はちゃんとそう思っていた。
・・・しかし、何故かその日はそういう風は最後まで吹いてこなかった。
まず、レビンの運転手が公衆電話へ行っている間に、レビンの助手席からもう一人の男性が降りてきた。
自分の車を降りて憮然として立っている私に近寄ってくると、開口一番で
「すみません」
と謝られてしまった。
え?と思いつつも、
「こちらこそ、お時間をとらせてしまってすみません」
と、単に巻き込まれてしまっただけらしい同乗者の男性に謝ると、更に
「ちょっと気の短いヤツで、運転が荒いんですよね。」
とフォローされてしまった。
(・・・いえいえ、それは実は私もです)とは素直に言えなかった。
電話が済んだ運転者が戻ってきてからは、しばらく3人で気まずい雰囲気。
たまにレビンの運転手が不規則発言のように、
「先月もぶつけられて3度目なんだよな。まだ買って2ヶ月なのに。お払い行かないとダメかな?」
なんてコトを呟いていた。
そしてやっとお巡りさんが到着。
定年直前くらいの年齢っぽいおじさんが、バイクで一人でやってきただけだった。
まず、コトの次第をレビンの運転手がまくしたて始めた。
至近距離の車間でついてこられて、2回くらいぶつけられたような衝撃を感じた、と。
ついてこられた・・・と言っても、街道を同じ方向に走っていただけである。
そして、ぶつけられたことについては、既にあたりは暗くなっていたので、私の車のライトでレビンの後部を照らして確認することになった。
・・・が、
どこにもそれらしき凹みもキズも確認できなかった。
ここにきて、今まで勢いよくまくしたてていたレビンの運転手が焦り出した。
「いや、でも確かに衝撃を感じたんです!
・・・ホラっ!これって、ぶつけられた時に凹んだんじゃないですか?」
そう言って彼が指差したのは、自分の車のナンバープレートだった。
その車のナンバープレートは、最初っから凹んだフォルムになっている場所にはめ込まれていて、更にその場所の中で、やや内側へ反り返っていた。
うちの車が前方正面に杭でも出っ張らせてない限り、そんなコトはできませんがな。
そんなコト言わなきゃ良かったのに、その言葉のせいでお巡りさんはすっかり真面目にレビンの運転手の言うことを聞く気持ちを失くしてしまったようだった。
私は終始憮然とした表情で、質問された時以外は一切沈黙で通していた。
それがお巡りさんにどういう取られ方をしたのかはわからないけれど、こういうトラブルでは余計なコトは言わない方がいいらしい、と身をもって教えられた気がした。
最後はお互いの名前と住所と電話番号をお巡りさんに言わされて、運転免許を確認されて、
「もう暗いから、気をつけて運転してね」
と言われてバラバラのタイミングでその場を立ち去るだけで事なきを得た。
・・・ああ、助かった。
神様、よくわかりました。
私が一人勝手に怒りにまかせてバカなコトをしでかさなくても、私がスッキリしようがしまいが、ちゃんと因果応報は巡っているのだと。
だから、自分のしたことで報いがきて後悔するようなコトはしちゃいけない、と。
ところで、なんでこんなコトを今さらブログに書いたのかと言うと、この顛末で、私とレビンの運転手はお互いにお巡りさんに職務質問を受けて自分の職業を言わされたのだけど、そのやりとりを思い出したのがきっかけだったのだ。
「職業は?」
と聞かれて、私は普通に
プログラマーです。」
と答えた。
それを聞いたレビンの運転手は何を思ったのか、
国家公務員です。
と答えた。
地方公務員であるお巡りさんはその言葉に眉をひそめて、
「で、どこに勤めてるの?」
と再び質問したら、レビンの運転手は
「・・・○○郵便局です。」
と素直に答えた。
当時はまだバブルの余韻が残る時代だったから、カタカナ職業に対して何か対抗意識を燃やされてしまったのかもしれない。
でも、その時とにかく印象に残ったのは、
(やっぱり公務員でいることって、本人にとっては世間的にすごくアドバンテージだという意識が強いモノなんだなあ)
というコトだった。
今、巷で郵政民営化が物議を醸しているのを目の当たりにして、あのレビンの運転手のことを思い出さずにはいられなかった。
既得権益にしがみつきたい郵政の関係者はいっぱいいるのだろうけれど、ああいう人もきっとその一人になっているのかも知れないなあ・・・と。
そうそう、やや話が逸れるけれど、昔勤めていたパソコンスクールで、副業で講師をやっていたシステムエンジニアの男性と受講者が授業中にケンカになってしまったコトがあった。
自習形式で個別指導をするクラスで、講師がとある女性の受講者を授業中にナンパしていて、全然指導してもらえない状態になってしまった他の受講者が怒ったという顛末だった。
非は完全に講師の側にあったのだけど、その時受講者が使ったタンカが、
俺は一部上場企業の従業員だ!
だったそうな。
・・・彼は○武デパートの契約社員だった。
そんなコトを言ったら、セブンイレブンの直営店バイトのコだってそうなるじゃんか。(^_^;
職業って、後ろ暗いことのないまっとうな法人で、もしくはフリーランスで真面目に働いているのであれば、貴賎なんてないじゃないか。
本当は肩書きなんかじゃなくて、自分の実際の仕事ぶりからどれだけの信頼と尊敬を周囲から得ることができてるかが大事なんだと思うのだけど、それでもやっぱり、「国家公務員だ!」とか「上場企業だ!」とか叫びたくなるモノなのかなあ?
もちろん、その職種を選んだだけでも十分尊敬に値するような肩書きもあるっちゃあると思うけれど(命懸けの職業とか)、ヘタにそんな言葉を口にしたら、却って
「コイツはこの肩書き以外に勝負できるモノは何もないらしい」
と思えてしまうだけだから、やめた方がいいと思うんだけどなあ。。。
それとも、肩書きって一度背負ってみるとクセになるものなのかな?
P.S.いりーさん、ネタありがとうございました♪