「ユナイテッド93」を観た

地元の映画館では次の土日はもうやってなさそうだったので、ようやく「ユナイテッド93」を観てきた。
前評判どおり、特に政治的だったりアクション的だったりするような脚色は一切ナシ。その日起こったことをほぼドキュメンタリーの雰囲気で追いかけた内容の映画だった。
前半の方は、日常的な飛行機の離陸前準備から乗客が乗り込んでいって、混雑する空港からようやく飛行機が飛び立つまでのユナイテッド93便の平凡な様子と、最初に世界貿易センタービルに突っ込むことになるアメリカン11便の異常を管制センターが気付き、各方面へ情報収集をしているさなかにビルに突っ込んだ事実を知るまでの流れを追っている。
このあたりは、その日のことを知っている人間にとってはちょっとまだるっこしく感じるかも知れないけれど、それもまた、「あの日は普通の日の筈だと誰もが思っていたのに・・・」ということのひとつの象徴なんじゃないかと思う。そう思える許容範囲のまだるっこしさ。
ただ、日本人がこの映画を見るには、この映画の前半部分に出てくる空港や到着予定地などの地名とか、関係機関の管轄や力関係などがわからないとちょっとツライかもしれない。なので、この映画を映画館で観るのであれば、先にパンフレットを買って開けて読んじゃうのもアリかと思う。(特にネタバレを気にする映画ではないと思うし・・・)
それでも関係機関に関する解説はパンフにはなかったので、ちょっとツライかな〜・・・?
後半は主に機内でのハイジャック犯と乗員乗客の様子がメイン。ユナイテッド93はあの日ハイジャックされた飛行機の中で最後に離陸した飛行機だっただけあって、他の飛行機がNYテロの爆弾代わりに使われたことを、乗員乗客とも飛行中に知ることになる。そして結末へと向かう。
この映画には、ブルース・ウィリスハリソン・フォードも出てこない。
ただただ、あの日に当事者・関係者達が直面した混乱と恐怖と、祈りが描かれていた。
あの事件から5年が経ち、イラク戦争を経て、あの事件に対するさまざまな政治的な見方が為されるようになった今だからこそ、改めてこういったシンプルな事実を見るための映画があるのはいいコトなんじゃないかと思った。
ああいう事件で日本人にウケそうな題材をやるとしたら、多分オウム真理教の起こした「地下鉄サリン事件」なんだろうと思うんだけど、アメリカと違って、警察や消防や永田町の内部までをリアルに描けるような映画を作る勇気のある製作会社は日本にはないんだろうなぁ。。。(もしどこかで実は映画化されてたとしたらゴメン。でも、少なくとも私が知らないというコトは、あんまり目立つような宣伝活動はしてなかっただろうと思うんだけど・・・)
ちなみに、私個人が特にこの映画・・・というか、この日についてちょっとだけこだわっているのには、理由がある。
2001年9月11日は、私の31歳の誕生日だった。
その日は当時の彼氏が遅い時間に私の家にやってきて、バースデーケーキを前に歌を歌ってろうそくの火を消して、「おめでとう」を言ってもらった後、何気なくテレビを点けたらいきなりあの映像が出てきたのだった。
それ以降その夜は特に甘い雰囲気などはなく、2人してちょっと非現実的に思えるあの映像と続報を真夜中過ぎまでテレビで見ていた。
私にとって特別な日として扱いたかった日は、他の人にとっても別の意味で特別な日になってしまった。
もちろんそんな日は他にもいろいろあるのかも知れないけれど、なんとなく、私はこの日の持つ特別な他の意味をきちんと知りたいと思った。
そうそう、なんかどんどん映画からかけ離れた話になっちゃって申し訳ないのだけれど、この日は秋篠宮紀子様のお誕生日でもある。(勝手にちょっと恐縮する自分)
特別な日が増えるのは、おめでたいコトだけであって欲しいモノだ。
ちなみに、今回この映画については、私自身は娯楽として観に行ったつもりはないので、評価の星はあえて付けません。
逆に、事実を辿る映画として評価するのであれば、90点。
マイナス10点分は、時系列や関係機関のことが若干わかりにくかった部分のせい。でも、監督があくまでもああいう描き方をしたかったんだと言われてしまったら仕方ないかな。
もうすぐ「ワールド・トレード・センター」も日本で公開されるけれど、あちらはどうかなぁ?
ニコラス・ケイジ、きっとあの面白顔で感動させてくれるだろうと期待はしているけれど、微妙な題材なので過剰演出がないことを願うばかりだ。