そうなんです、読感です

チーム・バチスタの栄光

チーム・バチスタの栄光

会社の人に勧められて読んだ本。確かベストセラーになってたかな?なかなか面白かったです。
バチスタ手術の成功率を誇る医療チームが続けて術中死に遭い、門外である筈だった窓際(希望)医師がその原因調査をする話。
著者は実際に医師であるとのことで、そのへんの技術的な話を軸にしたドキュメンタリーっぽい話なのかと思いきや、主要登場人物の個性がしっかり立っていて、彼らのやりとりから話が進む立派なミステリーになっていた。
もちろん、病院での人間関係のことや医療技術や医療事故についてもそれなりにきっちり描かれているのだけれど、無駄に専門的になってしまうようなうっとおしさはなく、むしろ本編で最も重きを置かれているのは調査のために行われた関係者との言葉のやりとりで、調査する側である田口医師のちょっとひねた真面目さや、中盤から出てきてハデに立ち回る白鳥さん(ちょっと刑事コロンボ風なやり口をする)の対比が面白い。
それから、これは私自身が実社会でもよく思うことではあるのだけれど、真っ当な会社や組織はやっぱり
上にいる人間がちゃんとしてる!
高階病院長、うん、いいねぇ〜。
ちなみに、この本の登場人物の一部は他の作品でも出てくるらしいのだけど、本を勧めてくれた会社の人によると、そっちの作品の出来はまだ微妙らしい。。。
そういえば、この本の読み易さは私にとっては宮部みゆき作品を読んだ時に感じた感覚と似ている気がするなぁ。面白く、かつどこか安定した気持ちで読めるトコロとか。

続いてもう1つ。

ヒュウガ・ウイルス―五分後の世界〈2〉

ヒュウガ・ウイルス―五分後の世界〈2〉

実はかなり前に読了してたのだけど。。。
以前読んだ「5分後の世界」と同じ世界の話で、あれから多分10年か20年くらい後の頃の話らしい。
日本が太平洋戦争で降伏しなかったことを前提とした、架空の日本(世界)でのお話で、日本は連合軍に分割統治されていて、地上ではスラムや非国民村といった地域が出来て生活が荒廃し、一方地下に隠れた日本軍の生き残りは「UG軍」を組織し洗練された教育と秩序のもとに生活を築きながら連合軍と戦っている。(時には取引もしつつ)
そんな日本国内のある地域で原因不明の疫病が発生し、その対応を患者の関係者に(後にはアメリカ軍からも)非公式に依頼されたUG軍がCNNの女性記者を同行させて現地へ向かう。。。
「半島へ出よ」の時と似た構図で、物語自体は疫病そのものをどうこうしようという内容ではなく、その事件を通して連合軍に分割統治されてしまった日本における人々の荒廃ぶりや、その状況の中でも強く生き延びようとするUG軍の在り方を描くことが主体になっている。
とはいえ疫病の原因と見られる「ヒュウガ・ウイルス」の特性については、これまた著者のメッセージが含まれているようにも思える。
ちなみに実は、私としてはストーリーそのものだったら「5分後・・・」よりはこちらの方が好きだったりする。
多分、UG軍に関する描写がこっちの方がきちんとしているからかなぁ、話の内容のしっくり感がいい。
ただ、話のボリュームがちょっと小さいせいか、読後に若干物足りなさが残った。
その後どうなったかは読者に任せるということなのだろうけれど、私としては日本国外で「ヒュウガ・ウイルス」がどんな影響を与え始めたのか、ちょっとだけでいいからサービスで描いて欲しかったです、村上先生。
「5分後の世界」とセットでないと理解しにくい話ではありそうだけど、「5分後の世界」が好きな人には薦めたい一品。