読了

  • 一四〇八号室

なるほど面白かった♪
死人が続出したため、ずっと使われていない状態となったホテルの1室をめぐるお話。
ホテルの支配人と、その部屋に泊まりたがる男のかけ合いがよい。2人とも心に思うところはあれども、口に出すのは理性的な駆け引きの言葉となっていて、そういう言葉から逆に問題の部屋の異様さが滲み出してくる感じがある。
実際の怖い描写の部分については、個人的にはフツーという感じなのだけど(多分慣れ過ぎのせい)、確かに自分が死ぬときがあるとしたら、「変死」扱いされるような死に方はイヤだなぁ〜とは思った。(^o^;
ちなみに知らなかったのだけど、この短編は去年アメリカで映画として公開されていて、かなり好評だったらしい。(日本公開はもうそろそろ)私が気に入っていたキャラであるホテルの支配人役をサミュエル・L・ジャクソンがやっているとのこと。ステキ♪
で、部屋に泊まりたがる男の方は、ジョン・キューザックということで、これもまあ、まずまずのキャスティングかな。ただ、ストーリーはかなり変えられているらしい。確かにもとネタは短編だから、変えないと映画としては物足りなくなっちゃうだろうしなぁ。
もし日本でコレを単発ドラマくらいでやるとしたら、支配人役は(かな〜り抑えた演技にしてもらって)タモリ佐藤慶あたりで、宿泊客の役は・・・うーん、原作どおりのイメージとしては「理知的でタフなんだけど若干やさぐれが入っている」男なんだけど、こういうタイプなら唐沢寿明とか佐藤浩市あたりで無難にいけそうだけど、自分の好みとしてはロンブーの淳(が大根役者でなければ)かSMAPの草なぎ君にお願いしてみたい。
なんでかって言うと、それはー、この2人が(演技とはいえ)本気で怖がっている顔がどんなのか、見てみたいから(^m^;興味本位でゴメンナサイ♪

  • 幸運の25セント硬貨

キングらしい、妄想てんこ盛りも賑わいを見せている可愛いお話。
ホテルの客室係の女性がチップに25セント(今だと日本円でまさに25円あたりか?)コイン1枚をもらい、それをどう使おうか考えるというもの。こういうネタをどこか優しいお話に膨らませられるところが、なんだか良い。
実は自分、キングの作品はまあまあ好きだったのだけど、キング本人の人となりはよく知らなかった。
書いている内容からして、多分1〜2度くらいは何かの精神疾患をやらかしたことがあるんじゃないかとは思っていた(すみません、面白い作品ばかりではあるんだけど、あれだけ妄想や脳内思考の内容が爆発していると、そうせざるを得ないくらいの何かが頭の中に溢れてたんじゃないかと思っちゃったんです・・・)のだけど、wikiを読む限りだと、やっぱりそういう既往症があったらしい。
そして、多分本人は随分前から小説家として一財産持ってる状態だと思われるにもかかわらず、多くの作品に変わらずリアルなアメリカ労働者階級の人達が出てくることに、何か本人のこだわりや書きたいもののメインがそこにありそうな感じがしていたのだけど、やはりこれまたwikiによれば、本人は小さい頃に父親に蒸発されて(それっきり)、経済的に苦しい状態ながらもお母さんが頑張って育ててくれたらしい。なんか納得。
キングの描く女性は、怖いくらい逞しかったり辛辣だったり狂信的だったりということもあるのだけれど、どこか突き放しきらない、優しい扱いをされている感じがある。そして、ビンボー生活の描写にいつもどことなく風情がある。(まあそれがかなり侘しい風情なこともあるのだけど)
こういう、自分の生い立ちがバックボーンになっている小説家ってすごいと思う。毛色が全然違うんだけど、内田春菊もそういうタイプだよな。
自分の生い立ちをもとに何かを文章にすることは、自分の心の中にあるわだかまりや傷のようなものを自ら再現する作業にも等しいところがあるんじゃないかと思うのだけど、それってすごく辛い作業なんじゃないかと思う。
ただ、それを完璧な形で作り上げることができたら、その時にもしかしたらそういう痛みから完全に解放されるのかもしれない。
でも、その過程を想像したり、その結果物を誰かに見せるということまで考えると、私にはとうてい出来ない作業だなぁと思う。そのへんについてどこかの芸能人が聞かれた時に「自分はMだから」と答えてることがあったけれど、もしあれが冗談でなければ、本気のMってやっぱりスゴイと思う。。。
キングの作品は正直ハズレもあるだろうとは思うけれど、できれば少しずつ時間をかけて、いつか全部読めたらいいなあと思う。