大人になってわかること

土・・・というものを意識した時に思い出したこと。
自宅で飼っていた動物が死んだときって、概ねちゃんとお墓を作ってあげるものだと思うのだけど、自分が子供だった頃はそれを当たり前のように、たとえば公園の木の下とか、学校の校庭の隅とかに埋めるものだったよねぇ。
私の定番の墓地は、実家のあるURの団地に自転車置き場があって、その側面の軒下だった。
自転車置き場は立派な屋根と壁があって、屋根は15cm間隔の凹凸があり、その凹部分に添って雨が降ると水が流れていって壁側の側面下に小さな水溜りを並べてつくっていた。
その水溜りのせいで柔らかくなって特長的に丸みを持っている土の部分を、お墓としてよく掘って使っていた。
金魚とか、鳥とか、おたまじゃくしとかかな。猫はどうだったかな?猫は姉が大好きだったから、埋めるのも姉がやってたかな?
子どもの頃はいつのまにかそんな場所を見つけて、当たり前のように生き物が死んだらお墓に入れてあげていたのだけれど。
大人になって、一人暮らしを始めた後、初めて死んだ猫を埋める機会があった。
ある日の夜、仕事を終えてアパートに帰ろうとしたら、自分の家のあるアパート2階に上がる階段の途中に、子猫がいた。
なんでそんなところに子猫がいたのかわからないのだけれど、その子猫は誰かに頭を踏まれたのか壁にぶつけられたのか、とにかく頭の一部が凹んでいた。でも生きていた。
このまま放置したら、明日にはこの猫の死体を見ることになるのは明らか過ぎたので、そういう展開が苦手な自分としては止むを得ず近隣の動物病院へ電話をして、「20時までに連れてきてくれるなら」という条件で診察してもらえる約束をとりつけたので、タクシーを呼んで猫を病院へ連れて行った。
でも病院でもここまで頭が陥没している猫に施せる処置はなかったようで、(または、私が拾っただけの猫にお金のかかる治療は望んでいないと勝手に思われたのか、)とりあえず無難な範囲で手当てと何かの注射をして、
「多分、今晩中には死んでしまうと思うけれど、明日の朝になっても生きていられたら、その時にまた連れてきてください」
と言われて連れて帰った。
連れて帰って、お医者さんに言われたとおりに、自宅で猫の体温を保つためにホカロンを仕込んだタオルなど用意していたら、その間に猫は一声だけ鳴いて、そのまま死んでしまった。
出逢ってからほんの数時間だったけど、可愛い猫だったんだけどなぁ。。。
悲しかったけれど、死に際を看取ることができただけで、ほんの少しだけ安心もした。きっとこれは自己満足だろうけど。
タオルに猫の体を包んで、その日の晩はそのまま寝て、次の朝早く、硬直した猫の体を包んだタオルを持って家を出た。その日も平日で仕事があったのと、猫とはいえ死体を埋める作業を人の多い時間にはやりたくなかったからだ。
そう思って家を出たのだけれど・・・・・・
うーん、
どこに埋める?
大人になってみて、冷静に考えると、これは結構面倒な話だった。
当時住んでいた地域には公園らしい公園はなく、子ども達は学校かそのへんの空き地で遊んでいた。
空き地と、中途半端な畑だったらそこそこある。
しかし、いつ家を建てるつもりかわからない空き地に猫を埋めるのは憚られる。
畑は、埋めること自体は悪くなさそうだけど、勝手に埋めるのはこれまた憚られる。
それに、畑の場合、誰の畑かわからないと誰に許可をもらえばいいのかもわからない。。。
そう悩みながら、猫の死体を持って早朝に街中を徘徊する怪しい女になること15分。
1件だけ、明らかに自宅前を畑にしていると思われる家を見つけた。
朝っぱらから怪しいよなーと自分でも思いつつ、その家に近づいてみると、いかにも朝らしく、おばあちゃんが1人で庭作業をしているラッキーな展開があった。
「あのー・・・」
と、勇気を出しておばあちゃんに声をかけたら、おばあちゃんの方も普通に対応してくださって、経緯を説明したら猫を埋めることを快く承知してくれた。
埋める場所を指定され、そのへんの石を拾って土を掘ろうとしたら、鍬を持ってきて穴を掘る作業も手伝ってくれた。おばあちゃん自身も、近所で車に轢かれて死んだらしい犬を埋めたことがあるとのことだった。
猫を埋め終わって御礼を言うと、
「それより、たまには線香でも上げにきてやってね」
と言われた。
大人になっても、なんとかやれるもんだなぁ〜と安心し、死んだ後のことも思い遣るおばあちゃんの心根に感心させられた。
今現在、結婚して2人の子どもを育てているけれど、そんな記憶があるせいか、自分が住む場所に望むことは、「気持ちよく布団を干せること」と、実は「死んだ動物を埋められるような公園や土地があること」だったりする。
都会(東京23区)育ちで今でもそっちへ戻りたがっている旦那さんにはイマイチわからないみたいだけど、今住んでいる地域はその2つを満たしているので結構満足している。
でも、動物の生き死にに遭うのはやっぱり苦手だし、それでちーちゃんやゆーちゃんが泣くのもあまり考えたくないから、ご縁がなければ極力動物は飼いたくない・・・かなぁ〜。(^_^;